機動戦士ガンダムSEED DESTINY #33「示される世界」

※撮り溜めを初見で感想を書いているので、現在から見ると見当外れの記載も多いと思われますが、どうぞご容赦をw


工エエェェ(´д`)ェェエエ工工
ちょっと、ちょっとデュランダル議長!あんた、おかしいよ。
「ぎちょーーーーーーーおっ!(議事進行係風)」


カガリ達が懸念している事が何かはまだちょっと分からないけど、議長が言っていることはそれ自体おかしいというか、危険な香りがプンプンするよ。


注)以下、ちょっと妄言が走りすぎているので、違和感・反感を持たれる方もいるかもしれませんが、そこは是非生暖かい目でスルーしてくだされば幸いですw


さて、もちろん議長も意図的に発言しているのだとは思うけど、やはり、複雑なはずの世界を単純化してしまうのは危険だ。


ロゴスさえ倒せば世界は平和になるって?


そんな訳ないでしょう。仮にこれがコーディネイター登場以前のナチュラル同士の戦争だったとしても単純に解決したはずがないのに。
前に(⇒機動戦士ガンダムSEED DESTINY #19)、議長の言う「軍産複合体陰謀説」への疑問を書いたことがあるが、「ロゴスはナチュラルの側にしかいないのか?」という疑問もさることながら、ロゴスの存在などとは関係のないところで、そこには「ナチュラルとコーディネイターの確執」という、より根本的な問題が厳然として横たわっている。


議長の言葉は、意図的に問題点を単純化して提示し、流されやすい民衆を煽ることによって、本質的な問題点を隠蔽する意図があるように感じられる。


「先天的に優れた人間を創る」、遺伝子操作を経て誕生するコーディネイターは、生まれながらにしてナチュラルよりも優れている。どんなにごまかそうとしても、ナチュラルには劣等感を、コーディネイターには優越感を与えてしまう。
古来より人類は、根拠のないこととはいえ、幾度となく人種間の優劣を口にしてきた*1。それが遺伝子操作によって、科学的に証明できる形で、「優れた人間」を創造してしまった。
「認めぬ者同士の戦争」アンディは言った。
「ヤツら(ナチュラル)を全て滅ぼすのがこの戦争の目的」パトリック・ザラは言った。
コーディネイターは人類*2の敵」アズラエルは言った。


これこそが、コズミック・イラの世界における最大の問題点である。(前作終盤では、クルーゼによる「クローン人間の悲哀」によってちょっと散漫だったが、ナチュラルvsコーディネイターの殲滅戦となる展開は、世界観の解釈としては本流だったといえよう。)
デュランダル議長のような政治家にとっては、この点への解答・解決への道筋をつけることこそが腕の見せ所のはず。


過激派はともかく、ブルーコスモスの考え方の基本(遺伝子操作への懐疑)は人間としてはもっともなことだろう。現実世界でもクローン人間を禁止している国は多い。
シンだって、強化人間製造施設への嫌悪感を隠そうとはしなかった(⇒機動戦士ガンダムSEED DESTINY #25。(余談:ここがシンの(恐らく最大の)欠点なのだが、被害者意識が強い故か、内省すること無しに他者への攻撃を露わにする事が多い。強化人間製造施設、キラ・フリーダム・アークエンジェルアスランカガリ・オーブ、挙げ始めれば切りがないがw)
すなわち、人工的に生命(特に人間)を改造することに対しての嫌悪・罪悪感という意識は、ナチュラルはもちろんのこと、コーディネイターであっても有しているのだ(自分たちのことは別として)。
また、遺伝子操作により先天的に優れた人間を生み出されることは、ナチュラルにとって見れば、社会の指導者層がコーディネイターによって占められてしまう事への恐怖を感じさせることも当然だろう。
オーブにおいて、ナチュラルとコーディネイターが共存出来ていたのは、オーブが君主制をとっていて、指導者がコーディネイターになってしまう危険がないことも大きかったのではないか。


人種が違うどころか遺伝的に違う生物になってしまう可能性のあるコーディネイターに対して、生理的に嫌悪・恐怖してしまう人たちは必ずいるはずだ。そのような人たちにとって、コーディネイターに対する感情は「理屈ではない」のではないか。
この点、ブルーコスモスの盟主である、故アズラエルジブリールは間違いなく、「コーディネイター排斥」というある種の宗教的確信に基づいて行動しているように見える。彼らのような信念がブルーコスモス、ひいてはナチュラルの行動原理となった場合、そこには宗教的使命感に突き動かされた「聖戦」が繰り広げられる。


一方、コーディネイターの側にしても、出生率の低下によって人口が先細りになる*3ことから数の上ではナチュラルに敵わない。また、宇宙に追いやられており、ミサイルを撃ち込まれれば逃げ場もない恐怖。ナチュラルが劣等感を抱くように(「どうせあいつらは俺たちのことをサルぐらいにしか・・・」)、優越感を抱くコーディネイターも多いだろう。パトリック・ザラの思想の継承者も依然として一定の勢力を保っているかもしれない。


嫌悪や恐怖は論理じゃなくて、感情に訴えるものだから質が悪いのだ。


そして、ナチュラルとコーディネイターは既に全面戦争を経験し、お互いに無数の犠牲者を出した。「血のバレンタイン」「ブレイク・ザ・ワールド」の記憶も生々しいはず。
タリア艦長も前回言っていたじゃないか。
「(アークエンジェルと)共闘できれば良いのでしょうけど、難しいわね。今となっては。」
正にこれだろう。仮に、ナチュラルとコーディネイターの争いがロゴス・ブルーコスモスに煽られたものだったとしても、世界の全ての人々が理性的になれるはずもない。そのような世界はかつて一度も存在しなかったし、将来においても存在しないだろう。
「殺したから殺されて、殺されたから殺して、それで最後は平和になるのか?」カガリは言ったけど、ナチュラルとコーディネイターの間の全面戦争を経た後に世界の全ての人々がこの言葉に耳を貸すのだろうか?


確かに、全面的に解決することは非常に難しい。しかし、一部の人々に感情が噴出する場面はあっても、要所要所で理性を優先させ、折り合いをつけていくしかない。片手で殴り合っていても、もう片方の手は握手をして、決してその手を離してはならない。
だからこそ、「ロゴスさえ倒せばバラ色の世界が待っている」的な議長の演説は、甘いささやきではあっても、何らかの意図を含んでいるとしか思えないのだ。


このように、考えれば考えるほど、「ロゴスさえ倒せば世界は平和になる」に対する答えは「否!否!否!」ということになる。


それでは、こんな無茶苦茶を尤もらしく民衆に対して投げかける議長の真意はどこにあるのだろうか?さらなる妄想をしてみようw


ナチュラルの国家において、デュランダル議長の煽動に煽られた民衆が蜂起し、政府に対して「ロゴスを倒せ!」と迫った場合、当該政府はどのような対処をするだろうか?
私はプラントの政治体制に対してはかなり疑問を持っているが(出来れば別稿を立てようとずっと思っているのだがまとまらないよorz)、ナチュラル国家においては現実の国家と同様の可能性が高い。大西洋連邦(米国が中心だろうが)においては大統領が存在しているし、恐らくは統治機構も米国を基本として、欧州のもの*4を加えたような体制をとっているのだろう。
とすると、別にエリート支配論を是とするわけではないが、ナチュラル国家においての指導者層は、総体としては(個別にロゴスと癒着している者もいるだろうが)大局を見ることの出来る者が多いのではないか。
そのような者達は、民衆に対して「ロゴスを倒すことも重要ではあるが、それだけではない!」「もっと大事なこともある!」等と説くだろう。
民衆の中にはそれらを理解する者もいるだろうが、圧倒的多数は「ロゴスを倒せ!」と熱狂しているだろう(何しろ、あれだけのイケメン議長による甘い声でのテレビ演説を見ているのだしw。議長のことだからフリーダムを消しただけではなく、他にも映像に細工してあるかもしれない。サブリミナルとか*5混ぜてあるかも)。
そうなってくると、それこそ議長の思う壺ではないのか?


「議長が『ロゴスこそ元凶』と言っているではないか」「我々の政府は何を躊躇しているのか」「きっとロゴスに操られているのだ」「いや、ロゴスそのものだ!」「倒せ!殺せ!」


そこで、ザフトを派遣して民衆に手をさしのべたらどうなるか(人道的支援とか言うだろう)。「救国政府」という名のプラント(議長)による傀儡政権を打ち立てることなどは造作もないことだろう。しかも民衆による熱狂的支持を得ているときた。
何のことはない、結局のところナチュラル国家において、指導者層がコーディネイターによって占められてしまう。
コーディネイターによって支配されてしまうことに対する恐怖・嫌悪・反感は、かつてブルーコスモスによって主張され、多くの民衆の共感を得ていた。手法・主張の過激さはともかく、ナチュラルの多くはブルーコスモスの思想に対して共感を抱いていたはずだ。
しかし、事ここに及んでは、「ロゴス=ブルーコスモス」としてだけではなく、「議長の示した正義に背く者」として、民衆の支持を完全に失ってしまう。
事実上コーディネイターに支配されてしまった現状を憂い、立ち上がる者(平和的活動家であっても)は「ブルーコスモス」「危険思想」として合法的に排除されてしまうことだろう。


体良く母屋を乗っ取られたナチュラルにとっては、次第に暗黒の時代を迎えるかもしれない。下級市民として扱われたりし始めれば、ナチュラルの中にも我が子をコーディネイターにする者が出てくるだろう。
そしていつしか、ナチュラルは滅亡してしまうかもしれないね。


うわぁ、なんだか訳の分からないことになってしまった(^_^;)
勝手に手が動いたんだよー。
未来人の方々(リアルタイムで視聴している人)からしてみれば失笑ものなんだろうなー_| ̄|○


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今回見ていてもう一つ思ったのは、ちょっとシンは可愛そうかなということ。
誰もシンのことを気にかけてあげる大人・友人がいないよね。


アスランは例によって自信喪失状態。スーパーエース(笑)のシンからすれば最早話を聞くような対象ではないようだし。
タリア艦長が説教をしても全て軍本部に覆され、シンには全く伝わらないし*6。自分の信念で行動し、結果的に善だと追認された。ある意味確信犯の状態だよね。
ルナマリアの話なんてまともに取り合ったこともないし。まぁ、ルナマリアもアカデミー時代からシンを扱いかねていたようだけど。
整備クルーコンビなんて、「居たの?」って扱い。
アーサーのことだって端っからバカにしているようだし。


結局、シンのそばにいるのはレイだけになってしまった。どうせ「おまえは間違っていない」と優しいささやきで煽っているのだろう。
シンがカガリに突っかかっていったときだって、「注意はされたが、間違っていない」といった感じの態度だったよね。


いろいろ批判もあったようだけど、前作においてもキラはアンディと出会い、抽象的な「敵」ではなく、(もちろん同じコーディネイターということもあるが)理性的に物事を考えることの出来る具体的な「人間」を認識し、衝撃を受ける。
「敵であるものを全て滅ぼしてかね?」というアンディの問いは、この世界でのナチュラルとコーディネイターのあまりにも(感情が絡み合っているが故に)複雑で困難な関係を端的に表していると言えた。今回でもアーサーが「討つべきものは討たないと」と言っていたが、戦いに疲れ、思考を止めてしまえば、より安易な解決に流れてしまいがちになる。
さらに言えば、大人よりももっと大人な「超越者」たる我らがラクス様の存在も大きかったよね。


今作のシンが出会った「敵」はステラとネオしかいない。ネオは仮面かぶっちゃてるし、「人間」として認識しづらい。ステラに関しては好きになっちゃてるし。
だいたいシンは「敵」というものを具体的なイメージで捉えられていないのじゃないか?
ストライクとラゴゥの決戦のとき、キラは敵モビルスーツを「バルトフェルドさん」として認識していた。
一方、シンにとってフリーダムはフリーダムであって「キラ」ではない。
具体的な敵方の人間として、シンに影響を与えられる立場にいたトダカも、シンには気づかれることなく「運命の皮肉」として逝ってしまった。


このまま進むと、ステラ水葬の直後に見せた般若のような怒り顔をさらに深化させて、精神のバランスを保つことが難しくなってしまうのではないだろうか*7


フラガ少佐(ネオ大佐)。フィジカルデータ一致ってことは、クローンではないのかな?
記憶が無くても、口癖は変わらない。そりゃ辛いよね。

*1:先週はNHKで「アウシュビッツ」放送

*2:そこにはコーディネイターは含まれていない

*3:それ自体が恐怖だ。たとえ、科学の力で解決すると信じているとしても。

*4:憲法裁判所とか?

*5:あれ、これって単なる都市伝説だったんだっけ?

*6:前回も少し呆れ気味だったよね

*7:本当にそこに持って行くつもりにしても、あまりにもシンがかわいそうだよね。カミーユは最後はあんなになっちゃったけど、前向きに生きていたはず。