スターシップ・オペレーターズ #12「ウオー・クライ」

良かった、素直に面白かったと言えるね。
特に、政治上の駆け引きによって(一切の描写がないのが、時間的制約によりやむを得ずかどうかは分からないが、かえって良い影響)、満身創痍のアマテラスクルーによる知略と努力が全て徒労に終わるかもしれない感じ。
「我々の知らないところで始まって、知らないところで終わった。」(プラネテス ロック・スミス)を思い出した。


アマテラスとコンキスタドールによる手負い戦艦同士の戦いも、それ単体として非常に面白かった。
お互い観測機器に不具合を抱え、相手がどこにいるのか、相手もまた損害を受けていることは想定できていても(すぐに攻撃が来ない)、その内容・程度が皆目分からないところからの探り合い。互いに遠く離れており、目視などとうてい敵わない宇宙戦艦戦ならではの展開。いかに表現として淡々としすぎていようが、これこそがこの作品の戦闘面での最大の見せ場なのだ。
だから、前回の戦闘でも「計測器よりテレビを信じるアホ艦長」など居ても居なくても十分に面白かったのだ。レーダーで見えていても、「想定の範囲(流行語大賞候補w)」*1を大きく超える回頭能力によって混乱に陥る「王国」艦隊を撃破する展開の方がより良かったのかもしれないが。


コンキスタドールが副砲を撃ってわざわざアマテラスに場所を教えてしまったのは少々軽率にも思える。しかし、コンキスタドールとしては主砲が生きている以上敵艦の位置さえ特定できれば一発で終わる。アマテラスが主砲を撃ってこない事から想定される、①主砲の故障・②観測機器の故障のどちらにしても、修理の猶予を奪うのは悪い作戦ではないだろう。性能低下している自艦の観測機器でアマテラスの位置特定までの時間さえ稼げれば良かったのだから。
もちろん、アマテラスの位置特定よりもアマテラスの修理の方がが速ければ、コンキスタドールも撃沈の危機に陥るが、そこは戦いである以上「勝負」すべきポイントなのだろう。実際、チャージサイクルが長く連射の利かない主砲を温存・チャージしつつ、連射の利く副砲での攻撃を選択したのも理に適っているのではないか。


対して、アマテラス側としても相手の与えてくれた敵艦位置特定のチャンスを利用して作戦を立てる。
ただ、ちょっとシノンの考えは決め打ちに過ぎる印象がある*2が、まあ何はともあれ、敵艦による捕捉よりも速くリボルバーの射程に入るという「勝負」には勝つことが出来た。ここでタカイが外しさえしなければ、アマテラスは「戦闘」によって窮地を脱することが出来たはずだった(実際には、「政治」によって窮地を一旦脱することになったが)。残弾3発を「3点バースト」で撃ってしまうことの是非は私にはちょっと分からないが、タカイをしてあそこまで見事に外すのは、リボルバーに何か不具合があったのだろう。


そして、打つ手無しとなったアマテラスに対してコンキスタドールの主砲照準が合わされているところで来週に引いてくるかと思ったが、そうではなく政治交渉の結果登場した地球連合艦隊*3で引いてきた。
これは、今回の2大テーマ(というより、本作品の2大テーマ)である戦闘パートと政治パート(これまでは時間の都合で大きくカットされたのだと善解したいw)のどちらが主であったかを示しているのではないだろうか。*4
来週の最終回に、戦闘は全く行われずに、全ては政治上の事として決着しても不思議ではない。私はそれも一つの結論の出し方だと思う(盛大に叩かれるという予想も否定できないが)。
ただ、戦闘になるとしても、あの状態からアマテラスが戦闘を行う事が可能なのか*5が全く想像できないので、その展開次第では最終回にきて「大絶賛状態」(シリーズの評価ではないw)に陥らせてくれる期待もある。


途中に挿入された、地球連合本部での間宮前総理の演説。地球連合各国に対して、「亡命政府アマテラス」の主張を切々と訴え、「情」によって一発逆転を図っているのかと思われたが、実はそれすらも大いなる「茶番」だったとは。裏で行われた政治交渉を側面から支援する「儀式」としての意味合いはあったとは思うが。
ある意味、間宮前総理の目的にとってみれば、少なくとも彼の地球行き以降のアマテラスの戦いは、敗北こそ望まないものの、「時間稼ぎ」にすぎず、これもまた「茶番」だったとも言えるのではないか。
タカイが言っていた「死んでいった者達」さえ、無駄死にではない(「時間稼ぎ」には役立ったので)ものの、誰がどのタイミングで何人死のうと(全滅は困るが)、逆に一人も死ななくても、間宮前総理の企図する政治上の駆け引きの前では些細なことに思えてしまう。


間宮前総理は、地球連合の主要国(相変わらず大国主導なのだろうか)に対して、「情」ではなく「利」を説いたのだろう。当然相手も建前上「利」のみで動いたというのでは対外的にまずいので、「亡命政府アマテラス」としての「義」も併せ主張したのだろうが。
ここでの「利」に当てはまるのは、間宮前総理も言っていたが、「王国」を一掃することでのヘンリエッタ星域での各種利権を地球連合が握ること。「義」とは、アマテラスおよび間宮前総理側を「キビ」の亡命政権と認定した上で侵略から解放すること。


逆に「王国」の側も、「捕縛した海賊船(反乱軍でも良いが)アマテラス」を交渉カードとして持ち出すことで、地球連合に対して、「義」を含ませつつ、「利」説いたはず。
こちらの「利」は、戦力が疲弊したとはいえ「王国」との大規模な戦闘の回避プラスα(詳細不明ながら、雌狐による何らかの便宜が想定される)。「義」とは今回の事態を「王国」の内政問題と認定した上で、これに対する不干渉、および「海賊・反乱軍」鎮圧への助力。


今回の段階では、未だ間宮前総理・「王国」議長のどちらの政治交渉が成功したかは明らかになっていない。だから、結城シメイが喜んだのも彼の地球連合とのつながりを示すものと即断できない(彼のぬか喜びに終わる可能性も残されている)。
地球連合は間宮前総理の示した「利」と、「王国」議長の示した「利」とを比べて、冷徹にその針路を判断したのであろう。


「義」と「利」と「情」、どれを優先させるべきか。絶対に避けなければならないのは、「情」に基づく判断だ。「好き・嫌い」を行動原理にしてはならない(現実には難しいがあるべき姿として)。
政治というものは、対立し合う「利」と「利」の調整を(出来るだけ)「義」に適うように行うところに本質があると思われるからだ。
その意味で、間宮前総理の演説に感動した地球連合の人々が泣きながら協力を快諾するといった展開にしなかったことには好感が持てる。


ところで、いよいよ突撃・最大船速といったところで、リオとキスカに手ぐらい握り合って欲しかったのはきっと私だけなのだろうな。まあ、キスカは表面上公私の区別を出来るようなので(シュウでのパーティを想起)、艦橋でそんなことはしないのだろうが。
ただ、私がこの二人の関係に萌えられるのも「スターシップ・オペレーターズ」擁護集や、原作既読の方の感想などで情報を補完したからこそのことなので*6、「やっぱり話数が足りないよ」とお決まりのコメントを最後に入れておこうかな(苦笑)。

*1:ちょっと登場が早いので無理だろうが

*2:シノン自ら「都合良すぎる」と言っていたのは笑ったが

*3:さすがに地球連合は戦力が豊富だね

*4:本当は、これだけキャラが大勢登場するならば3つめのテーマとして、キャラパートもあってしかるべきなのだろうが、これも時間の都合で・・・w

*5:地球連合艦隊もいるのに!

*6:でも、たとえ話数が多くても、このアニメでリオのモノローグを入れるのは困難なので、二人の関係性を表現するのは小説ならではなのかとも思える