機動戦士ガンダムSEED DESTINY #44「二人のラクス」

※撮り溜めを初見で感想を書いているので、現在から見ると見当外れの記載も多いと思われますが、どうぞご容赦をw


デスティニー・プラン


終盤に来て情報量がさらに多くなってきた。ちょっと追い切れないよ。
まずは「議長の目指すセカイ」の内実
ラクス様の説明を私なりに理解したところでは、遺伝子レベルで「既に決定されている能力・役割(=運命)」に従って全ての人々が生きるセカイなのかな?
他人の能力を妬んだりすることはなく(あきらめることが出来るから)、自分の能力を過信したりすることもなく、「与えられた」役割に従って、自分の能力*1を発揮して生きる。それで争う必要もなくなる?


ただ、聞き落としたか、まだ明かされていないのかもしれないが、どっちなんだろう?「遺伝子解析による能力診断に従って役割を決定する」のか、「役割を与えるために遺伝子を操作する」のか。
前者なら、ナチュラルはナチュラルなりの個々人の能力に従った(まさに、「誰の子として生まれ出でたか=どのような遺伝子を受け継いだか」という「運命」によって決定された)役割を「演じる」ことになる。
しかし、この作品の世界では、既に遺伝子解析の枠を越えて、遺伝子操作による潜在能力の改変が(少なくともコーディネイターの社会においては)一般化している。とするなら、後者の可能性も十分に想像できる。だけど、そうなってくるともっとおかしなことになりそう。
遺伝子操作が一般化しているとするなら、「能力に差異があることを遺伝子によって定められた運命として受け入れる」必要は無いってことじゃない?遺伝子操作によって「運命」を変えられる。究極的には、全ての人間の能力を遺伝子レベルで均一化することだって目指し始めるんじゃないの、人間は。賛同を集めるかどうかは別としても、「それこそが最も確実に争いの種を潰す方策だっ!」とか主張する人も出てくるでしょう。逆に全員を「最高のコーディネイター」にするかも。ただ、「管理者」から見て、管理しやすいのは圧倒的に「中程度の能力に均一化された人間」だろうけど。
少なくとも現実世界では倫理的に(もちろん技術的に現段階では不可能だろうが)実行不可能だが、もっと非倫理的(とされている)なことを言えば、遺伝子レベルで人間の闘争本能(あるいは、それに類似した要素)を意図的に欠落させることだって視野に入ってくるのでは?人を争いに駆り立てる原因を遺伝子に求めるならば、当然に想定できる主張だ。
まるで、かつてのイタリア学派が犯罪の原因を生物学的な要因に求めたように(ロンブローゾの「生来性犯罪人説」が有名。犯罪者は生まれながらに頭の形が違うってやつね。)。


いずれにしても、そんなセカイすぐに滅びると思うけどね。
(広義の)争いが人を、いや生物を進化させてきたのは確かだし、残念ながら我々の便利な生活(この日記が存在するネットワークですら)は戦争の無いセカイでは生まれなかったかもしれない。だからといって「必要悪」ではないはずで、「人々がそれぞれ違い、完全ではない」からこそ、調整をしたり議論をすることで可及的に(争いは無くならないが)「戦争」を減らすことは出来るはず。
それを科学者特有の*2合理的思考か何か知らないが、デュランダル議長は根本から作り直そうって言うんだから。「管理者」が愚かなら崩壊のスピードは加速するよ。議長は永久に生きるつもりなのだろうか。そこでクローン技術の登場ですか。


やはりここで対立関係に立つのが、前回ラクス様の仰った「それを決めるのは貴方」との言葉だ。「生き方を決めるのは運命ではなく、自分自身」という思想。


でもなぁ、果たしてラクス様率いる「アークエンジェル党(ラクス・クライン党?w)」に民衆の支持が集まるのだろうか?
実際問題として、今回アスランの言っていた「俺はそんなにあきらめのいい人間じゃない」といった言葉に賛同するのは一部の人々だけじゃないのかとも思えてくる。元々「運命論者」というのは世の中にいっぱいいるのだろうし、「誰かが決めてくれて、それに従った方が楽だ」と考える人の方が多数なのではないかと。
アークエンジェルでは、アスランの言葉に呼応して、みんな盛り上がっていたけど、あれを民衆に対して語りかけたとしてどうなるだろうか。
「ウゼー事言ってんじゃねーよ!。お前らは自分で決められるからそんなこと言ってられるんだ!」などと非難を浴びないだろうか。「お前らみたいなのがいるから争いは無くならないんだ!」と、危険思想扱いになるのではないか。(騒音問題への賛同者を募っていたら、「あなたの方がうるさい」と言われたみたいな。ちょっと違うか?)
「管理者」たる議長にしてみれば、彼らのような「危険分子」を排除することで「争いのないセカイ」を実現するつもりなのだろう。「私に任せておけば良いものを、自分で決めようとしたりするからいけないのだよ。自己責任だ。」ぐらいのことは言いそうだ。


あまりに難しすぎるテーマだが、このSEED世界における最大の問題点である遺伝子にまつわる課題、「コーディネイターナチュラルの対立」やそれを一挙に解決する処方箋としての「セカイの再構築」は、過去に何度か指摘したが、この作品のテーマとしては最も正面から提示されるべきものだと言える。恐らく最後まで回答はなされないだろうが、少なくとも提示されたことは評価したい。仮に批判されたとしても(それは容易に予想できるがw)、この問題に誰が回答できるというのか?「単純に回答したり、処方箋を明示することが可能だと思うことの方が危険だよ。」とのメッセージさえ示されていれば十分じゃないかと思う。うやむやにして投げちゃわないでねw


うっかりしてたのは、「レクイエム」のような最終兵器の可能性。そうだよなぁ、終盤にかけて盛り上げるなら最終兵器の撃ち合いの事を想定していなければいけなかった。きっとメサイアにも何かあるよ。
だけど、再び(というかユニウス・セブン以上の)悲劇に見舞われたプラント国民は収まらないだろうね。どんな言葉が通じるというのか。「あそこにあんなものがある内は・・・」ということだろう。
かくして、舞台は宇宙に移ることになるわけだが、議長は当然攻撃を知っていたんだろうね。ミーアに対する態度や、攻撃直後も「大仰な芝居をしていますよ」といった演出が*3なされている。
ジュール隊の攻撃によって射角がずれ、首都直撃は避けられたようだが、議長からすればそんなことどっちでも良かったのだろう。「ジブリール氏を逃したからプラントが討たれた」という事実さえあれば。
周到に準備された「世界中から信頼される指導者、デュランダル」という虚像(?)は、実を結びつつあるようだし。


既に死相の出ていたミーアもいよいよヤバイことになってきた。再電波ジャックに上手に(ラクスらしく)対応できずに醜態をさらしたあげく、「本物は名誉の戦死、偽物*4は捕縛・処刑」といったプロパガンダに利用されかねない。
別れ際の議長の態度も、もう完全に「ありがとう、キミのことは忘れないよ!(涙笑顔)」といった感じ。


シンはやっぱり可愛そう。心が揺れ動く出来事(アスラン・偽ラクス?・メイリン)の度に、「いやいや、僕が悪い訳じゃない」*5。横からレイが「そう、悪いのは敵だ」。
あれでおかしくならない方がどうかしてる。だいたい、あの3人の中でシンだけが蚊帳の外じゃないか。レイはほとんど全てのことを知っている。ルナマリアは議長のラクスが偽物である可能性を知っている(但し、そのことをレイに知られていること(わかりにくいなぁw)は知らない。)。そしてシンだけが、目隠しをしたまま戦わされている。


「偽物だろうが、本物だろうが、ギルこそが正義」レイからすれば議長の決定に従うのみだろう(「カラスを白いと言えば・・・」状態)。そして、自分は「偽物」という自覚があるようだ。

*1:サボることは悪なのかな?

*2:失礼!w

*3:ちょっとあざといが

*4:オーブのラクスに仕立て上げられたミーア

*5:奇しくもラクス様が「『悪いのは自分たちではなく、ロゴスだ』と、考えたいのでしょう」と囁いていたが